動物由来の回虫症

ブタ回虫によると考えられる幼虫移行症患者の肝臓CT像。転移癌を思わせるような多発性結節性陰影(矢印)が見られる(病変の大きさは5-10 mm程度のことが多い)。
 ヒトが動物由来(イヌ、ネコ、ブタなど)の回虫の虫卵を飲み込んだときには、これらの回虫の感染を受けることになる。ただし、ヒト体内ではこれらの動物由来の回虫は成虫になることができず、幼虫のままでとどまる。典型的な幼虫移行症である。最近ではヒト回虫を保有している人は少なく、人の糞便を肥料に使うことも少ないために、ヒト回虫症よりも動物由来の回虫による幼虫移行症が問題になっている。肝機能異常や肺炎症状があり、好酸球増多やIgE高値が認められて検便虫卵陰性の場合、まず動物由来の回虫による幼虫移行症が最も疑わしい。この場合、免疫診断による抗体検出のみが唯一の診断根拠となる。

動物由来の回虫症の予想される感染経路

動物由来の回虫症患者の地理的分布


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